突然段ボールというヒップホップバンド

「突然段ボール」という名前のバンドが存在する。

70年代の後半辺りから出始めたらしい。初期のメンバーは2人で「蔦木」という名字の兄弟のコンビバンドだった。たしか2003年頃にその兄貴さんの方が病気で亡くなってしまい、それ以降は弟さんが中心となった7~8人ぐらいのロックバンドとなって現在も活動を続けているらしい。

その兄貴さんがいた時のバンドの話をするのだけども、とにかく個性が強い、オリジナリティに溢れた曲ばっかりだった。

兄貴さんの野太い声による、社会性の強い内容を含む歌詞を歌い上げるボーカル。しかもこれがメロディに乗せてるような乗せてないような、とにかくリズム感とパッションのこもった、いわゆるラップであった。ラップといっても今のヒップホップのように韻を踏むだとか、フロウがどうとかスキルがこうとか、そういう難しいものではなくて、とにかく言いたいことを言っているような感じであった。

一方弟さんはギター担当で、基本的にはリフを続けるスタイルの曲が多かった気がする。

メンバーが二人なのでドラムの代わりに打ち込みを採用していた。

そしてベースは無かったと思う。

この、「ラップボーカル+ギター生演奏+打ち込み」というスタイルならば今で言う「ミクスチャーバンド」の走りとしてカテゴリ分けされていたかもしれない。だがしかし、兄貴さんがボーカルのみならず、鉄琴やキーボードといった「飛び道具」的な楽器を演奏していた。その為、どのジャンルにも当てはまらないような個性的で尖った音を作り出していた。

突然段ボールは世間一般的には恐らく「ロック」としてジャンル分けされていると思うが、時にはヒップホップに、そして時には謎の芸術的な前衛音楽にもなっていたと思う。
決して「綺麗な曲」とは言えない粗削りな音楽ではあると思うが、自分たちの表現したいことを素直に、あらゆる手法を使って、柔軟に、そして情熱をもって表現しているアーティストであったと思う。

兄貴さんが亡くなってしまい、弟さんがバンドを継続させているが、今となっては音は他のロックバンドと大差無くなってしまった。若干「突然段ボールらしい」と思う部分もあるが、大分薄まってしまったと思う。それほど、兄貴さんの存在は大きかった。

兄貴さんのいた頃の実験的な曲を聴くと、自分も何かに挑戦しようという気持ちにさせてくれる。

そんな勇気を与えてくれるような曲を作っていたバンドであった。

 

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