型枠のおじさん二人が引っ越し祝いでアパートに来た話

「ようじ、お前引っ越したんだよな?」

仕事中、型枠職人のKさんは私に言ってきた。

そう。私は先月引っ越しをした。現場仕事は毎日現場が転々と変わるのでここ最近仕事をさせて貰っている型枠会社には住所が変わった旨を伝えるべくその事を話していた。

「はい。そうですよ。」

ちょうどその話をしたのは完全に引っ越しが終わって一週間後くらいだったと思う。

「そうか~。大変だったな!じゃあ引っ越し祝いでもしないとな!!」

完全に社交辞令だと思っていたので、

「アハハ。そうですね!」

と、適当に返事をした。

 

そして3日後、

「ようじ、土曜日の夜とかどうかな?」

Kさんが仕事中またしても話してきた。

「え?何がですか?」

自分は聞き返した。

「引っ越し祝いだよ!今週土曜日夜なんてどうかな!?」

とKさんは言ってきた。

(え!?マジでやるの!?)

私は心の中でそう思った。

というのも、そもそも引っ越して一週間くらいしか経ってないので、まだ全然片付いていない。

それにそもそもKさんとは働いて半年になるが一緒にお酒を飲んだ事は一~二回しかない。これは結構少ない方だと思う。

ちなみにKさんは私より二回りほど年上だ。

そんなKさんが引っ越したばかりの私の家に来て引っ越し祝いをするなんて、というかそもそも引っ越しって祝う事なの?と、色々考えてしまった。

とりあえずよく状況が飲み込めないので断ろうと思ったのだが、Kさんの目を見てみると、少年のようにキラキラと輝き、「とても楽しみにしている。」と言っていた。

「大丈夫ですよ!」

目の輝きに押され、OKをした。

「よし!じゃあお酒買ってくるからな!そうだ!焼肉パーティしよう!!」

(おいぃー!!!引っ越し祝いは百歩譲ってやるとして、新しく越してきた部屋で焼肉するってどうなんだよ!!油とか臭いとかこびりつくだろ!!)

と心の中でツッコミをいれたのだが、Kさんの輝く目を見たら

「焼肉いいっスね!!」

と言ってしまった。

その後、もう一人の職人のおじさんも誘い、そしてKさんは型枠会社の社長にその旨を話してお祝い金という事で一万円ほど貰って私に渡してきた。

「これで良い肉買おう!」

行動力凄い。

そんなこんなで当日、色々忙しくて全然準備ができていなかった。

土曜日も仕事だったのでそれが終わってからのパーティとなる。

まずダッシュで家に帰って、最小限のスペースを片づけて作ったら、机を用意した。

これは今までの現場で余った端材を寄せ集めて作った机の天板。天板だけは以前から作っていた。

足もゆっくり作ろうと思っていたが、急遽作らないといけなくなった。

 

 

とりあえず風呂場で足になる棒を切ってビスで留めた。

多少不安定だけどちゃぶ台の完成である。

こだわらなければ短時間でできる。

 

それから買い出しへ行って、肉と野菜、飲み物やお菓子などを買った。

というか、買い出しも私がやるんかいと一瞬思ったが、社長の祝い金のおかげで普段だったら手を出せないような良い食材を買えたので良かった。

なんだかんだホームパーティを開いてくれるのは嬉しかったので、テンションの上がるグッズも100均で買った。

パーティ感がとても出ると思う。

パーティと言えばケーキなので調子に乗ってケーキも買った。もちろんメッセージの注文も自分でした。

 

という事で準備が終わり、Kさんともう一人の職人のおじさんがやってきた。

肉がめちゃくちゃ美味しくて、私たちは喜びながら飲み食べした。

普段できない仕事の裏話や、それ以外の話など、色んな話をたくさんした。

とても楽しかった。

パーティグッズも酔いが回っている事もあり、爆笑しながら着けたりした。

ケーキはおじさん達は食べようとしなかったので私一人で食べた。

BGMとしてKさんが松山千春のDVDを流していた。

「長い夜」が鳴り響いていた。

そんな感じだったが、結局皆仕事終わりで疲れていたという事もあり、11時ごろに全員眠たくなったので寝た。別に長くなかった。

翌日の朝に解散した。ビールが30本ほど余った。

 

最初引っ越し祝いを誘われたときは戸惑ったけども、やってみるととても楽しかったし、その後、仕事中の雰囲気も良くなった。

とりあえず、この会社の仕事頑張ろうと思った。

 

おわり ちゃんちゃん

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